レディオヘッドに学ぶイノベーション(後編)2018年11月21日
中小企業相談所の藤本です。
趣味は音楽鑑賞とギターです。音楽はなんでも好きです。特にロックが好きです。
さて、今回は「レディオヘッドに学ぶイノベーション」の後編です。
前回のコラムでの問題の答えはわかりましたか?
質問を繰り返しておきますと、
問:レディオヘッドの作品「キッドA」が「(経営学的な定義における)イノベーション」であったと考えられる理由について、最も適切なものを下記の解答群から選びなさい
①レディオヘッドの「強み」を活かし「機会(時代の流れ)」をつかんだ作品であったから
②レディオヘッドの「弱み」を克服した作品であったから
③ファンのニーズ(期待し望んでいたこと)に完璧に応えた作品であったから
④ファンのニーズを大きく裏切り、かつ、ファンの潜在的欲求を満たす作品であったから
正解は・・・『④ファンのニーズを大きく裏切り、かつ、ファンの潜在的欲求を満たす作品であったから』です。
ひとつずつ回答群を見ていきましょう。
まず、①と②について。
これは、藤本コラムを愛読していただいている優秀な方たちであれば「あ、これはSWOTの考え方だよね。違うよね」と解答群から消すことができたはずです。消すことができなかった方は第一回目から勉強すること!(笑)
次に③。『ファンのニーズ(期待し望んでいたこと)に完璧に応える』という考え方。
これは、「マーケティング」の考え方です。(博識な方々には「いやいや、勉強不足なやつだな、これも立派な『持続的イノベーション』だぞ、キミ」とつっこまれるかもしれませんが、ややこしくなるので、その議論は一旦棚に上げさせてください (笑)。)
マーケティングとは、顧客のアンケートなどから市場動向を分析し、「お客様の求めているものはコレだ!」と、「マーケット」に「イン」した商品サービスを展開していく活動です。
レディオヘッドに例えてみましょう。OKコンピューターという完璧なロックアルバムを世に出した後、世間は彼らに「もう一度、この素晴らしいアルバムの続きが聴きたい」と期待していました。要は、みんな彼らにOKコンピューター『Ⅱ』を期待していたのです。マーケティング理論に基づくと、それでよかったはずです。
ところが、彼らはそれをしなかった。
『④』を行ったのです。
まず「ファンのニーズを大きく裏切り」ました。
そう、「キッドA」は「OKコンピューター」の音楽とは大きく異なっていました。サウンドそのものが電子音を基調とした「エレクトロニカ」と呼ばれる電子音楽スタイルに変わっていたのです。
みんなが期待して待っていた「OKコンピューター Ⅱ」。そんな中で、彼らは世間の期待を裏切って、バリバリのエレクトロニカアルバムをリリースしたのです。
当然、ファンが初めてこの作品を聴いた時は「????」です。それはそうでしょう。だって、ずっと後に聴いたわたしでさえ、「な、な!!あのジョニー・グリーンウッドの、ロックなギターはどこにいってしまったんだ!?」と、混乱したのですから。 (笑)
しかしフロントマンのトム・ヨークはじめレディオヘッドのメンバーはみんなわかっていたのです。「俺たちのファンであれば、この作品の良さが、必ず理解できる」と。
そして、実際にそうなりました。キッドAを何度も聴いているうちに、ファンたちは、こう思い始めます。「確かにサウンドは前作から大きく異なっている。けれど、レディオヘッドの「世界観」は失われていない。むしろ「キッドA」は、より彼らの世界観がクリアになっている作品なのではないか」と。
そして、気づくのです。
「そうか。これこそが自分が求めていたものだったのだ」と。
言い換えれば、「ファンの潜在的欲求を満たした」わけです。これがすなわちイノベーションです。
言うは易しですが、イノベーションは簡単には起こせません。カップヌードル、ファミコン、iphone、YouTube、Amazon・・・客の期待の斜め上をいくような商品・サービスを送り出すことは並大抵のエネルギーではできないからです。では、どうすれば、そのようなことができるのでしょうか。
残念ながら、この問いに対する答えはありません。だからこそ、先般、当所が主催したセミナー「イノベーション塾」においても、参加者同士、この議題について何時間も対話してもらい、各々の答えに辿り着いてもらいました。
わたしが言えることは、例えば、答えのひとつに「多様な価値観との出会い」があると思います。自分だけの価値観に凝り固まっていては、イノベーションは起こせません。いろんな人の価値観を知ることから、イノベーションの芽は生まれるのではないか、と思うのです。
ですので、イノベーションを起こしたいお方は、とりあえず、藤本まで、というのはどうでしょうか。まずは人と出会って、話すところから、ということで。(笑)
レディオヘッドについて語り合いたい方も大歓迎です。お待ちしております。
ちなみに、前半でご紹介した村上春樹氏の小説「海辺のカフカ」の中で、カフカ君は、「僕は家を出てからほとんど同じ音楽ばかり繰りかえし聴いている」と、お気に入りのアルバムを3枚紹介してくれます。そのうちの一枚が「キッドA」です。
カフカ君、15歳にして、なかなかイノベイティブな青年ですね。
趣味は音楽鑑賞とギターです。音楽はなんでも好きです。特にロックが好きです。
さて、今回は「レディオヘッドに学ぶイノベーション」の後編です。
前回のコラムでの問題の答えはわかりましたか?
質問を繰り返しておきますと、
問:レディオヘッドの作品「キッドA」が「(経営学的な定義における)イノベーション」であったと考えられる理由について、最も適切なものを下記の解答群から選びなさい
①レディオヘッドの「強み」を活かし「機会(時代の流れ)」をつかんだ作品であったから
②レディオヘッドの「弱み」を克服した作品であったから
③ファンのニーズ(期待し望んでいたこと)に完璧に応えた作品であったから
④ファンのニーズを大きく裏切り、かつ、ファンの潜在的欲求を満たす作品であったから
正解は・・・『④ファンのニーズを大きく裏切り、かつ、ファンの潜在的欲求を満たす作品であったから』です。
ひとつずつ回答群を見ていきましょう。
まず、①と②について。
これは、藤本コラムを愛読していただいている優秀な方たちであれば「あ、これはSWOTの考え方だよね。違うよね」と解答群から消すことができたはずです。消すことができなかった方は第一回目から勉強すること!(笑)
次に③。『ファンのニーズ(期待し望んでいたこと)に完璧に応える』という考え方。
これは、「マーケティング」の考え方です。(博識な方々には「いやいや、勉強不足なやつだな、これも立派な『持続的イノベーション』だぞ、キミ」とつっこまれるかもしれませんが、ややこしくなるので、その議論は一旦棚に上げさせてください (笑)。)
マーケティングとは、顧客のアンケートなどから市場動向を分析し、「お客様の求めているものはコレだ!」と、「マーケット」に「イン」した商品サービスを展開していく活動です。
レディオヘッドに例えてみましょう。OKコンピューターという完璧なロックアルバムを世に出した後、世間は彼らに「もう一度、この素晴らしいアルバムの続きが聴きたい」と期待していました。要は、みんな彼らにOKコンピューター『Ⅱ』を期待していたのです。マーケティング理論に基づくと、それでよかったはずです。
ところが、彼らはそれをしなかった。
『④』を行ったのです。
まず「ファンのニーズを大きく裏切り」ました。
そう、「キッドA」は「OKコンピューター」の音楽とは大きく異なっていました。サウンドそのものが電子音を基調とした「エレクトロニカ」と呼ばれる電子音楽スタイルに変わっていたのです。
みんなが期待して待っていた「OKコンピューター Ⅱ」。そんな中で、彼らは世間の期待を裏切って、バリバリのエレクトロニカアルバムをリリースしたのです。
当然、ファンが初めてこの作品を聴いた時は「????」です。それはそうでしょう。だって、ずっと後に聴いたわたしでさえ、「な、な!!あのジョニー・グリーンウッドの、ロックなギターはどこにいってしまったんだ!?」と、混乱したのですから。 (笑)
しかしフロントマンのトム・ヨークはじめレディオヘッドのメンバーはみんなわかっていたのです。「俺たちのファンであれば、この作品の良さが、必ず理解できる」と。
そして、実際にそうなりました。キッドAを何度も聴いているうちに、ファンたちは、こう思い始めます。「確かにサウンドは前作から大きく異なっている。けれど、レディオヘッドの「世界観」は失われていない。むしろ「キッドA」は、より彼らの世界観がクリアになっている作品なのではないか」と。
そして、気づくのです。
「そうか。これこそが自分が求めていたものだったのだ」と。
言い換えれば、「ファンの潜在的欲求を満たした」わけです。これがすなわちイノベーションです。
言うは易しですが、イノベーションは簡単には起こせません。カップヌードル、ファミコン、iphone、YouTube、Amazon・・・客の期待の斜め上をいくような商品・サービスを送り出すことは並大抵のエネルギーではできないからです。では、どうすれば、そのようなことができるのでしょうか。
残念ながら、この問いに対する答えはありません。だからこそ、先般、当所が主催したセミナー「イノベーション塾」においても、参加者同士、この議題について何時間も対話してもらい、各々の答えに辿り着いてもらいました。
わたしが言えることは、例えば、答えのひとつに「多様な価値観との出会い」があると思います。自分だけの価値観に凝り固まっていては、イノベーションは起こせません。いろんな人の価値観を知ることから、イノベーションの芽は生まれるのではないか、と思うのです。
ですので、イノベーションを起こしたいお方は、とりあえず、藤本まで、というのはどうでしょうか。まずは人と出会って、話すところから、ということで。(笑)
レディオヘッドについて語り合いたい方も大歓迎です。お待ちしております。
ちなみに、前半でご紹介した村上春樹氏の小説「海辺のカフカ」の中で、カフカ君は、「僕は家を出てからほとんど同じ音楽ばかり繰りかえし聴いている」と、お気に入りのアルバムを3枚紹介してくれます。そのうちの一枚が「キッドA」です。
カフカ君、15歳にして、なかなかイノベイティブな青年ですね。